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セントヒル病院・腎臓センターと山口大学との研究成果(高濃度水素水透析システム)が発表されました。

セントヒル病院・腎臓センターと山口大学との研究成果(高濃度水素水透析システム)が発表されました。

 

High-Concentration Hydrogen Delivery During Dialysis Using an Innovative Direct Dissolution Technique: In Vivo Kinetics in a Canine Model

 

Masaki Shibuya,* Masafumi Fujinaka,* Mako Yonezawa,* Natsumi Nishimura,* Hitoshi Uchinoumi,* Kenji Tani,† Yukihiro Hitaka,‡ Kimihiko Nakamura,‡ Naohito Isoyama,‡ Zenzo Fujii,§ and Motoaki Sano*

 

ASAIO Journal 2025 Renal/Extracorporeal Blood Treatment ,Published:15 July 2025

 

【要約】

透析治療中の水素供給に新技術、従来法を上回る高濃度を実現
―山口大学の研究グループとの研究で、より簡便で高効率な水素透析システムの開発に成功―

透析治療中に高濃度の水素を安定して供給できる革新的なシステムを開発し、その有効性を動物モデルで実証しました 。この新技術は、従来の電気分解方式よりも大幅に高い濃度の水素を透析液に含ませることが可能で、将来的にはより多くの透析施設への導入が期待されます 。
この研究成果は、2025年7月15日に『ASAIO Journal』で発表されました 。

 

研究の背景

日本の透析患者は増加傾向にあり、透析治療に伴う慢性的な炎症や酸化ストレスが、患者の生活の質や生命予後に影響を与える課題となっています 。治療効果が期待される水素ガス (H2​) を透析液に溶け込ませる方法はこれまでもありましたが、濃度が比較的低いという課題がありました 。

 

新技術の概要と成果

研究チームが開発した新システムは、従来の電気分解方式とは異なり、水素ガスを直接水に溶かして高濃度の水素飽和水を作成し、これを逆浸透(RO)処理して透析液を調製します 。

イヌを用いた実験では、以下の点が明らかになりました。

 

  • 高濃度の実現: 新システムは、最終的な透析液中に約230 ppbという、従来法(30~80 ppb)を大幅に上回る安定した高濃度の水素を維持することに成功しました 。
  • 血液への効率的な移行: 透析器(ダイアライザー)を通過した後の血液中には、透析液中の水素濃度の54.0~67.7%に達する高い濃度の水素が確認され、水素が効率的に血液へ移行することが示されました 。
  • 作用部位の特定: 一方で、全身を巡る動脈血中の水素濃度は著しく低いままでした 。これは、血液に取り込まれた水素の大半が肺からの呼気によって体外へ排出されるためと考えられます 。このことから、本システムによる水素の主な治療効果は、透析回路内の血液やダイアライザーといった局所的な範囲で発揮される可能性が示唆されました 。

 

今後の展望

この直接溶解方式のシステムは、構造がより簡便で、既存の透析システムにも統合しやすいため、設置コストを抑えつつ普及できる可能性があります 。

 

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